2日目:社内の情報共有やコミュニケーション面に係るお悩み

Q 利益を上げている営業メンバーの立場が強く、言うことを聞いてくれない

A 普段からの態度が、社内の合意形成に深く関わる

多くの企業にとって、とくに意見が強く発言権があるのは営業的な機能をもつ部署でしょう。数字化できる実績を上げている部署がはっきりとした意見をもっているのは当然のことです。それゆえ、経営者の意見と営業部の意見とが食い違ってしまう場面を私も過去に数多く目の当たりにしました。
営業部も含めて、社内のメンバーが社長の判断に乗ってくれない、あるいは意見を聞いてくれない状況というのは、実は普段からの態度に深く関わっています。基本的に、思いつきでモノを言う経営者は社員から信頼されません。あからさまに怒りをあらわにするなど感情をコントロールできない経営者も同様です。社員との良好な関係を構築するには、普段から思いつきでものを言わず熟考する癖をつけることが肝要です。コミュニケーションをちゃんとし、感情的にならないことも、リーダーとしての信頼感を印象づけます。
たとえば、友達の経営者と飲んでいるときに、小耳にはさんだ「うまくいく商売ネタ」や、週刊誌に載っている成功した経営者の事例をすぐに真似したがる人がいますが、そういうのは「思いつき」の一種なので注意が必要です。笑
思いつきではなく、これが自分の信念であり、今後もずっと変わらない最終決断だと思える考えがあるならば、何度も何度もすべての社員が折れるまで社内で言い続けることが大事です。すぐに変わる思いつきていどの考えであれば、社員からしてみれば、それに振り回されるのは御免ですが、社長の覚悟と熱量がこもった決断ならば、その温度感が徐々に伝わっていくはずです。先ほども申しましたが、当初は違う考えでも、言い続ければ何かが通じ合い、人の意見を変えることが可能なのです。

Q 現場(工場など)の意向と、経営的な意向との折り合いがつかない

A ともに関心をもち密なコミュニケーションをとることで壁が解かれる

さて、経営者と営業メンバーのあいだで意見の齟齬が起こりやすいという事実がありますが、他方、製造メーカーなどの場合、工場などの現場の意見と経営的な意見が衝突することが多々あります。経営陣と現場との折り合いがつかない最大の原因は、お互いがお互いのことに関心がなく、お互いのことを知らないことであると考えられます。本部と工場は実際に物理的な距離が離れているかもしれませんが、経営者は現場を見に行くことが重要です。一方で現場はいま何が起ころうとしているのかを、たとえ話づらいことでも経営陣に率直に話すべきです。このように相互の関係づくりを行っていくと、事態の奥にひそむ表面的ではなく裏の理由が見えてきます。そうなると、相互に分かり合いどちらでもない折衷案に帰結することが多いのです。カレーが正しい、うどんも正しい、ならばカレーうどんを作ってみようということですね。
経営者とはこうあるべき・・という思想をマネージメント側がどう有しているか、経営者がマネージメントをどう考えるかが常日頃から問われています。支配するとか管理するという考えは、もともとコミュニケーションを取る気がない姿勢といえます。それは王権的な支配体制であり君主論と変わらないのです。現場のほうが知識があることについては、その知識についていこうとする姿勢が、たとえ経営者であっても大事になります。相互に関心を持とうとすると溝は無くなっていきますが、実際は現場に関心がなくて、何が大事なのか見ていない経営者も依然として多い状況といえます。

Q 各部署の交流がなく、戦略的な情報共有が促されない

A コストをかけず、勝手に交流しあう仕組みをいかにつくるか

いろいろな企業での社内的な課題をお伺いすると、部署ごとの相互交流がなく情報の透明性がないという問題は非常によく見かけます。部署間の相互交流を促すことは、決してコストのかかることではありません。コストをかけずに交流できる方法を経営者は頭をひねって考えるべきなのです。
ちょっと変わった比喩ではありますが、アインシュタインの脳ミソは、脳細胞の多さでなく、シナプスが多かったと言われます。組織も同じであり、個々の知見よりも情報交流が多いほうが強固でクリエイティブになるのです。
たとえば、「情報を共有しなさい」と強要するのではなく、つないであげるだけで勝手に交流するような場づくり、仕組みづくりも考えられます。いかに勝手に交流する仕組みを作れるかが工夫のしどころと言えますが、そのためのヒントはだいたい社内にあったりします。経営者として、社員が普段から気付いていながら口に出さない問題解決のヒントを、いかに引き出せるかが腕の見せどころです。

Q 予算の使途や収支があいまいで、漠然とした不安を感じる

A 社員との日常的な接点を生かし、情報を収集する

意外と無視できない経営者の悩みのひとつに、社内のお金の流れを把握しきれないということがあります。このことは、多くの経営者にとって非常に精神的なストレスになるようです。
この問題に向き合うには、経営者としてはやりづらいことかもしれませんが、一人一人に予算の使途を聞くのが最も現実的な手段です。一人一人に向き合い、ひとつずつ情報を引き出していくことで、実情が把握できるようになり、不安の原因が徐々に解消されていきます。Aさん、Bさん、Cさんそれぞれ言うことは違うかもしれないが、それをやれば全体的な実像が見え、いままで虚像を見ていたことに気づかされるでしょう。

社員のインタビューを経営者ご自身で実施できないなら、外部に委託するのもひとつの手段です。ただ、自前でやるにしろ委託するにしろ、インタビューの仕方は非常に重要です。このごろではよく「飲みニケーション」の重要性が言われますが、それは必ずしもすべての場合に有効ではありません。飲みに行くと社長がお金を出すので本音を言いずらいということがあり、よい結果を得られないこともあるのです。

私がおすすめするひとつの方法として、休憩時間や移動中の立ち話を生かすという手段があります。たまたま立ち会ったときに話すフランクなやりとりでは、社員も素の状態に近いので、わりと本音に近いことを話したりします。会議、立ち話、飲みニケーションの場など、社員と経営者との接点はさまざまありますが、それぞれの場を生かしたやり取りを行うことが大切です。社員から本音を引き出していく場をいかに作れるかも経営者の手腕が問われる部分です。