1日目:事業や収益性に係るお悩み



Q 既存事業のマーケットが縮小しており、新たな収益軸を確立したいが、どうすればいいか分からない

A 価値観は時代とともに変化していく、大局を見ることが大事

さて、最初のお悩みですが、ビジネスをやっている以上、かならずその商品にちなんだ市場(マーケット)というものが存在し、事業主はその市場の動向に振り回されることになります。市場の盛衰は時代性によっても変わってきますし、政治的な方針にも多分に影響を受けます。別の言い方をすれば、ある商品の市場は永久に安泰ではなく、かならず縮小する場面が訪れるのです。
このような事情から、いつの時代も経営者は市場全体の行く末に不安感を感じることになりますが、その不安感は漠然としていればいるほど益々増えていくものであり、そこから逃れて希望をもつためには、市場の本質というものに目を向ける必要があります。

商品はその時代性を反映させたものですから、その時代の主義や趣向に由来します。各時代の主義や趣向は刻一刻と変わっているわけですから、当然ながら商品のかたちもその時代ごとにリニューアルしていかなくてはなりません。
私が過去にブランディングを担当した老舗米問屋さんの例で言えば、依頼された当初、米の消費量が日に日に減っており、非常に不安感を抱えられていました。人口も減っていないのに米の消費量だけが減少していたのです。しかし、よくよく考えてみれば人間はものを食べなくてはならない生き物ですから、食料の消費が無くなることはありません。実態は、時代性が変わったことにより、パン食などの別のものに移行していたり、食べる理由や量、価格が変わっていたのです。そこで私は、市場競争に乗って価格を下げるのではなく、需要に合わせて付加価値を付与し、価格を上げる施策を実施することにしました。こうした施策の結果、撤退寸前の事業が、ECサイトのみで17億円以上の収益を上げるところまで成長したのです。このように、企業や個人がお金を使う対象は、日々どんどん変化していってます。何に移行しているのかを見るのかが大事なのです。

私の知人で、仏壇が売れない現代にあって家業の仏壇販売を継がなければならない方がいました。現代の時代においては、そもそも家屋の形状が変化しており、家に仏間が存在しない。その点が、市場が縮小している主因でした。そこで、その方は、仏間ではなくてリビングに置ける現代式の「ネオ仏壇」を販売し大きな成功を収めました。
一方で、別の知人は同じ仏壇業界に居て、仏壇制作の技術を全く異なる分野に応用することを思いつきました。ホテルのスイートルーム用の椅子やテーブルなどを非常に凝った彫刻で制作し、こちらもまた大きな成功を収めたのです。
いずれも、手法は異なりますが、全く同じ業界であり、本質性を捉え、現代式のスタイルのなかで活路を見出した、分かりやすい事例ではないかと思います。

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Q 顧客ニーズが変化してきており、今までの手法では通じなくなってきている

A 現在の手法に合ったニーズを徹底的に探る

さて、「顧客ニーズが変化している」という次の悩みもまた、先ほどの悩みに深く関係しています。顧客ニーズや消費者ニーズが変化していくことで、物が売れなくなったり、販路を開拓できなくなったりするのです。
さて、この悩みに対する対処法としては、顧客ニーズに合わせて手法を変えるか、あるいはいまの手法に合った別のニーズを探すか、いずれかの手段が考えられます。たとえば、先ほどの米問屋の場合、いまの食のスタイルに合わせれば、米粉パン、ライスサンドイッチのような新しい新商品を開発する手段もありました。ところが、彼らの場合は、いまの需要のままやってくる顧客ではなく、全く異なるマーケットであるギフト市場にアプローチする手法を選んだのです。前者はすでに同じことをやっている同業者が多いという判断でした。
いまの顧客ニーズに合わせるのか、あるいは全く異なる分野の顧客ニーズにアプローチするのか、方法はふたつありますが、そのいずれが得策なのか、競合も含めたさまざまなマーケット的なデータを鑑みて特定する必要があります。大きな判断が必要な場面で、その決定打になる情報をいかに入手できるか、それが事業の明暗を分けることになるのです。

Q 事業の数が増えすぎているが、どれも可能性があり、選びきれない

A コスト面と利率を考え、施策を絞り込む

自社事業の数を増やしすぎてしまうというのも、ビジネスの上では、かなり危険な展開と考えられます。なんとなくサービスが売れるのではないかと考え、事業を始める人が多いですが、「だろう」という曖昧な考えは、大抵市場ニーズとマッチしていません。初動の判断を誤ると、無駄な作業を大量にすることになります。
当然ながら、事業の数が増えても、その数だけ利益を得られるわけではありません。主軸を定めていないことは、情報集約も散漫になり、戦略を組み立てることが難しくなる原因にもなります。

事業がやたらに増えすぎていると感じられている場合は、まず短期で最も利益率が高くコストが低くすぐに結果が出るもの(売れるもの)に絞ることが得策です。また、王道の手段ですが、市場調査で的確にニーズを特定することも不可欠です。
開発のために何年も時間がかかるものに着手するのは避ける必要があります。長年かけても、それで当たって食べれるかも分からないのですから。長期的な取り組みが必要なものは、はっきりとした収益軸を確立してからでも遅くありません。

Q 新たにやりたい事業があるが、社内を説得できず、スタートを切れない

A たとえ経営者でも「根回し」をしてほしい

経営者なのにやりたいことが出来ないという状況は、社内での根回しが出来ていないためと考えられます。「えっ、経営者なのに根回しが必要なの?」と思われる方が居られるかもしれませんが、社員以上に、経営者には根回しが必要であると私は思います。行動学的に捉えれば、人は相反する意見でも受け入れることがあります。当初は意見が異なっていても、何度も聞いて少しずつ考えが変わってくることもあるのです。
重要なのは、ジャブを先に入れておくことです。「最近こういうことを考えているんだよね・・」とあらかじめ自分の考えを少しずつ社員に言っておけば、「社長はいまこういうふうに考えてるから、こうなっていくんだな」と想像できる。普段からそのような関係を築いていれば、新たなことを提案しても、「もう聞いてますよ」となる。一方、普段から考えを伝えることなしに、突然大きな方針について言うと、リスクが云々、よく考えているのか? などと反論が出ます。かと言って、社内の意見を無視して一人で独断で実行すると、誰もついてこないので失敗してしまいます。

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